萬福寺
まんぷくじ □京都府宇治市




<時空を超えて、心に響く世界。>
中国様式が色濃く残る京都・萬福寺は、壮大な伽藍配置や国宝建築、異国情緒あふれる堂宇が魅力の名刹です。開山の歴史や独特の文化、見どころを実体験とともに詳しく紹介します。本記事では萬福寺の見どころやアクセス、実際に訪ねて分かったオススメ情報などを詳しく紹介します。
所要時間:60〜90分(参拝・見学)
時空を超えて、心に響く世界。
萬福寺は禅宗の宗派である黄檗宗の大本山。宇治市街地東部の丘陵地に、約9万坪もの広大な境内を有しています。江戸時代前半に中国から高名な僧を迎えて創建され、当時からの中国風の仏教風土が今も色濃く残っている名刹です。
そこに広がる異国情緒あふれる境内と堂宇に、まるで時代も国も別の場所にやってきたかのような感覚になります。以前長崎市の崇福寺を訪ねた時に感じたような、独特の世界観に満ちた寺院です。

禅宗の宗派である黄檗宗の大本山「萬福寺」。中国より招いた高僧・隠元により1661年に創建された。
中国の高僧、隠元により創建された。
開山のために当時明の時代の中国から招かれたのは、中国にある黄檗山萬福寺の住職だった隠元という高僧です。1654年に63歳で来日し、中国の時と同じ萬福寺という寺号で1661年に開創しました。当初は一定期間で帰国するつもりが、ついに終生を日本で過ごして禅宗の布教に務めた名僧です。
1679年に現在のような壮大な伽藍が完成。その伽藍配置や諸堂の造り、また仏像をはじめ儀式や作法、さらに「普茶料理」と呼ばれる精進料理に至るまですべて中国の様式を取り入れており、それが今に至るまで受け継がれているのが萬福寺最大の特徴です。

1679年には現在のような壮大な伽藍が完成。約9万坪もの広大な境内に、独特の世界観が広がっている。
壮大な境内へ入る、総門と三門。
それは境内入口となる「総門」からさっそく感じられます。総門は一目見て中華風と分かる門。1661年に、境内で最初に建立された建物です。牌楼式といって、中央の屋根が高く、左右の屋根が低いシルエットが特徴。中央の屋根には想像上の生物・摩伽羅(まから)が載せられています。そして独特の渋みがある朱色。
総門を抜けると放生池があり、その奥に巨大な「三門」が聳え立ちます。1678年に建立された二重の楼門で、その迫力が素晴らしい建築です。三門を抜けたところに受付があり、拝観料を納めて中へ進みます。

境内入口となる「総門」。牌楼式と呼ばれ、中央の屋根が高く、左右の屋根が低いシルエットが特徴。

1678年の建立で、二重の楼門である「三門」。

三門の壮大さと迫力には圧倒される。
独特の伽藍配置と、異国情緒。
萬福寺は伽藍配置も特徴的。主要な伽藍が境内の中心軸で縦に一直線に並び、その他の堂宇は左右対称に配置されています。すなわち三門の先には「天王殿」「大雄寶殿」「法堂」が真正面に建ち並び、境内の左右には全く同じ配置で諸堂が並んでいます。またそれらの建物は全て屋根付きの回廊で繋がっていて、その全体の様子から「龍の伽藍」とも呼ばれています。建物の間には松林や庭園、池などが配され、そらを巡るだけでも結構時間を要します。
そしてどこを見ても感じられる、異国情緒。卍くずしの勾欄や「黄檗天井」と呼ばれるアーチ形の天井、諸堂の間口の左右に掛けられた木札やカラフルな香炉、桃戸や円窓など、日本ではほとんど見かけない趣きに満ちているのです。

主要な伽藍が境内の中心軸で縦に一直線に並び、境内の左右には全く同じ配置で諸堂が並ぶ独特の伽藍配置。

「卍」をモチーフにした高欄。

敷石もどこか異国情緒を感じる。

濃淡の石がランダムに張られた石畳。

砕石が埋め込まれた独特の築地塀。
布袋像を安置する、国宝「天王殿」。
まず「天王殿」を拝観します。天王殿は1668年に建立された建物で、萬福寺のいわば玄関に相当します。堂内には弥勒菩薩の化身とされる布袋像を安置します。太鼓腹で親しみやすい笑顔を持つ、あの七福神の布袋さまそのもの。その裏側には背中合わせになるように韋駄天立像が立っています。さらに左右に分かれて四天王立像も安置。多くの仏像にしっかりと見定めを受けているように感じられます。また天王殿は通り抜けられるような構造で、建物を抜けると真正面に大雄寶殿が控えています。

国宝の天王殿は1668年に建立された建物。堂内には弥勒菩薩の化身とされる布袋像を安置する。

太鼓腹で親しみやすい笑顔を持つ布袋さま。

左右に分かれて四天王立像も安置する。

布袋像と背中合わせになる韋駄天像。

境内には回廊が張り巡らされている。
萬福寺で最大、本堂の国宝「大雄寶殿」。
天王殿の次に拝観するのが本堂である「大雄寶殿」。1668年の建立で、萬福寺では最大にして最も重要な伽藍です。建物は左右の幅に対して高さがあり、また屋根の軒先は急激にそり返っていて、禅宗特有の様式が見てとれます。また南方で産出されたチーク材が用いられており、それは日本で唯一のものです。
堂内中央に本尊の釈迦牟尼仏像を安置し、脇侍に摩訶迦葉(まかかしょう)と阿難陀(あなんだ)を伴います。また左右の壁際には清の仏師・范道生による「十八羅漢像」が並びます。これがかなり見ごたえがあり、いずれも迫力ある表情と躍動感あふれる体躯の動きで見る者に迫ります。中でも両手で自らの胸を切り開き、その中に仏顔を持つ「羅睺羅尊者(らごらそんじゃ)」は特に有名です。

国宝の本堂である「大雄寶殿」は萬福寺では最大にして最も重要な建物。左右の壁際には清の仏師・范道生による「十八羅漢像」が並ぶ。

建築意匠は禅宗特有の様式が色濃い。

仏像も普段見慣れない雰囲気がある。

大雄寶殿に安置される本尊の釈迦牟尼仏像。

オリエンタルな風合いの香炉。
大雄寶殿の奥にある、国宝の「法堂」。
大雄寶殿のさらに奥にあるのが「法堂」。「はっとう」と呼び、禅宗の寺院における説法を行う場所です。かなり幅のある大きな建物で、1662年に建立されたもの。やはりその中国的な佇まいや趣きが印象的です。法堂は通常では内部は公開されていませんが、堂内には仏像が安置されておらず、須弥壇のみが置かれているそうです。
そしてこれら中心軸に建ち並ぶ「天王殿」「大雄寶殿」「法堂」の3棟は2024年に国宝の指定を受けました。加えて言うなら、萬福寺では他にも20棟の歴史的建造物が国の重要文化財に指定されています。回廊沿いの南側には「鐘楼」「伽藍堂」「斎堂」「東方丈」、北側には「鼓楼」「祖師堂」「禅堂」「西方丈」が、徹底して左右対称になるように配置されています。

大雄寶殿のさらに奥に建つ国宝の「法堂」。かなり幅のある大きな建物で、1662年に建立されたもの。

法堂の壁に設られた丸窓。

回廊の吊灯篭にも繊細な装飾がなされている。
萬福寺の象徴でもある、開山堂と回廊。
国宝の三堂以外で特に印象に残ったのは「開山堂」と「回廊」です。開山堂は三門を抜けて左手にある大きなお堂で、1675年に建立された建物。「通玄門」と呼ばれる中華風の門を持ち、開山堂外観は均整のとれた美しいシルエットが印象的。手前の石畳もランダムな形の石を見事に組み合わせているし、勾欄の卍は他の諸堂よりも分かりやすくデザインされています。堂内には萬福寺開山の隠元禅師像を安置してあり、神聖な場所として敬われています。
回廊はまさに萬福寺の象徴でもあります。全ての回廊には屋根が付いていて、吊灯篭が掛けられています。床には白と黒の石がランダムに張り分けられていて、独特の情緒を醸し出しています。これは龍の背の鱗をモチーフ化したものだそう。また開山堂近くには「合山鐘」と呼ばれる梵鐘があるのですが、回廊の途中に吊るされているという非常に珍しい梵鐘です。

萬福寺を象徴するのが龍の姿にも例えられる「回廊」。全ての建物を繋ぎ、独特の情緒を醸し出している。

開山堂の前に建つ、国重文の「通玄門」。

国の重要文化財に指定される「開山堂」。

幽玄の趣漂う、開山堂の堂内。

開祖隠元の墳墓である「寿塔」。
木魚の原型と言われる、「開梆(かいぱん)」。
また萬福寺で見逃してはならないのが、「開梆(かいぱん)」と「雲版(うんぱん)」です。開梆は大きな魚を表した木彫で、魚梆とも呼ばれます。中が空洞になっていて叩くと大きな音が鳴り、「木魚」の原型と言われています。大雄寶殿の横にあり、僧侶が食事をする「斎堂」横の廊下に、雲版と並んで吊り下げられています。雲版は雲の形をした青銅製の銅鑼のようなもの。いずれも朝昼の食事や日常の行事の際に打ち鳴らされます。開梆は3代目のものだそうで、その大きさや表現は必見です。

木魚の原型と言われている「開梆(かいぱん)」。魚を模した造りで中が空洞になっており、叩くと大きな音が鳴る。

魚の鱗までしっかりと再現されている。

雲の形をした青銅製の「雲版(うんぱん)」。
あらゆる新しい文化が、もたらされた。
また隠元禅師をはじめ中国の僧たちが日本にもたらした物事にも注目です。食べ物では隠元の名が付いたインゲン豆、スイカ、レンコン、タケノコ(孟宗竹)などがそうですし、テーブルと椅子で食事を取る習慣もこの時に伝わりました。また当時明王朝だった中国の経典をベースに作られた版木から、今では一般的な書体「明朝体」も伝わっています。他にも煎茶や普茶料理など、あらゆる新しい文化がもたらされたのがこの萬福寺でした。

隠元禅師をはじめ中国の僧たちが日本にもたらした物事は、食材や食習慣をはじめ書体など多岐に渡る。

回廊の途中にある梵鐘。

球形の石が印象的な庭園。

天皇殿手前、蓮の葉が浮かぶ池。

境内では随所に中国文化の情緒を感じる。
守り続けられた、特別な世界観。
萬福寺の魅力は書き切れるものではなさそうですが、境内を歩いていた時に強く感じたのは創建当時から今も変わらず守り続けられる厚い信仰心です。この時も僧侶が境内をくまなく清掃しておられ、それによって萬福寺独特の神秘的な美しさが保たれていること。また昔からの行事や儀式が今日でもしっかり受け継がれていることで、この特別な世界観が守られていること。萬福寺でなければ成せない歴史的な価値が、この場所にはありました。

異国情緒とともに萬福寺で感じられるのは、昔から変わらぬ人々の信仰心。それによって独特の神秘的な美しさが保たれている。

最初にくぐる総門は国の重要文化財に指定されている。

国の重要文化財である「祖師堂」。
photo.
アクセスマップと交通アクセス
■公共交通機関をご利用の場合
- JR奈良線「黄檗駅」下車 徒歩 約5分
- 京阪宇治線「黄檗駅」下車 徒歩 約5分
- 京都駅から:JR奈良線にて「黄檗駅」乗車(所要約15分)
■車をご利用の場合
- 滋賀方面から:京滋バイパス「宇治東IC」より車で 約5分
- 大阪方面から:京滋バイパス「宇治西IC」より車で 約10分
- 駐車場:境内南側に「萬福寺大駐車場」あり、普通車約50台/ 料金:最初90分600円、以降30分毎200円
詳細情報
| 名称 | 萬福寺 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府宇治市五ケ庄三番割34 |
| 問い合わせ先 | 0774-32-3900 | 萬福寺 |
| 休業日 | - |
| 料金 | - |
| 駐車場 | 有料駐車場 |
| 公式サイト | https://www.obakusan.or.jp/ |
| wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/萬福寺 |
| 食べログ | |
| トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g946495-d592344-Reviews-Obakusan_Manpuku_ji_Temple-Uji_Kyoto_Prefecture_Kinki.html |
| LAST VISIT | 202505 |
※掲載のデータは当ページ更新時点でのものです。以後の変更や詳細な情報につきましては、ご自身でお問い合わせの上ご確認いただきますよう、あらかじめご了承ください。
情報更新日:2026年1月





