鹿猿狐ビルヂング

古きを学び、新しいものを作り出す。

ならまちの一角にある町、元林院町。猿沢池の裏手にあり、奈良の裏通りといった風情あるエリアです。特に明治時代以降に奈良では花街として知られた町で、今でも現役の芸妓さんが活動されていたりします。当時からの町並みも一部残っていて、特にかつて芸妓の置き屋だった建物をそのまま活かした料理屋「まんぎょく」は外観も店内も、ならまちの手を加えられていない古い町家、それも花街という背景も愉しみながら舌鼓を打てることから、遠くのファンも多い名店です。

ならまちの一角にある元林院町は、明治時代以降に奈良では花街として知られた風情ある町並みが広がる。

江戸時代の町屋の様子を色濃く残す「絹谷家」。

元林院町の一角に誕生したのが「鹿猿狐ビルヂング」。

周囲の町並みとは、一線を画す外観。

そんな元林院町に2021年にオープンしたのが、鹿猿狐ビルヂング。周囲の町並みとは一線を画すガラス張りの外観で、子供の頃からこの町をよく知る私はかなり驚いたものです。まさか元林院の家の跡に、こんなにモダンな建物が出来るなんて。というのも、鹿猿狐ビルヂングが建つ土地の一部は、実は私の母親の実家であり、祖父母の家だったのです。小さな頃は母に連れられてよく遊びに行っていたし、近所に友達もいました。だから新しいビルが出来ると聞いた時は少し寂しい気持ちになったものです。

2021年にオープン。周囲の町並みとは一線を画すガラス張りの外観で、子供の頃からこの町をよく知る私はかなり驚いた。

新しいスポットとして、人気急上昇。

でもそのビルが、奈良を代表する雑貨店「中川政七商店」によるものだと知った時、逆になんだか嬉しい気持ちになりました。実は中川政七商店の本家が元々隣地にあり、その土地と一体としてビルが開発されたのです。建物もよく見るとならまちによく見られる「鹿よけ」や町家の格子をモチーフにしていたり、瓦屋根を採用して周囲の町並みに馴染むようにデザインされています。地元民として自信を持って言いますが、まったく違和感を感じません。
そしてすでに何度か鹿猿狐ビルヂングを訪ねていますが、いつも人で賑わっているし、奈良の新しいスポットとして順調に知名度と人気を上げているようです。訪れる度に、私の幼少期の思い出に塗り重ねられる誇らしさみたいなものがあるのです。

奈良を代表する雑貨店「中川政七商店」によって建てられた。奈良の新しいスポットとして順調に知名度と人気を上げている。

建物の真ん中を奥まで通路が通されている。

奈良の特産品を数多く取り扱っている。

奈良のエッセンスが、たっぷり。

風変わりなビル名は、中川政七商店のシンボルでもある鹿、また入居する主要テナントのモチーフから猿と狐が抽出されて名付けられました。
館内にはまず中川政七商店の奈良本店があります。古きを学び新しいものを作り出すというコンセプトのもと、懐かしくも目新しい、しかもそこには奈良のエッセンスがたっぷり詰まった生活雑貨に溢れています。ならまちで生まれ育った私にとっては、小さい頃から慣れ親しんだ奈良の風景が取り入れられていて、ついつい買ってしまいたくなる商品がたくさん。

「古きを学び新しいものを作り出す」というコンセプトのもと、奈良のエッセンスがたっぷり詰まった生活雑貨が揃う。

機織りの体験もできる、「布蔵」。

それからこのモダンな建物の奥にもまだ建物があり、そちらは築130年を超える古い町家と、ふたつの蔵。表のモダン建築とは打って変わって昔ながらの建物です。こちらでは創業300年以上、麻織物を生業としてきた中川政七商店の真髄に触れられます。
麻製品はもちろんのこと、蔵のひとつ「布蔵」ではいまだ現役という大正時代の機織り機や道具を展示。有料で機織りの体験もできます。またもうひとつの「時蔵」には中川政七商店の300年の歴史とともに、高級麻織物としての「奈良晒」を学べる資料が展示されています。

敷地内には築130年を超える古い町家と2つの蔵があり、「布蔵」では有料で機織りの体験もできる。

奥ゆかしい奈良の、本当の良さ。

他にもカフェやレストラン、またWi-Fi完備のコワーキングスペースもあり、奈良の新しい観光拠点として注目されている鹿猿狐ビルヂング。
単なる観光施設・商業施設というだけでなく、奈良の良いところを余すことなく取り入れた商品が揃い、奥ゆかしい奈良の本当の良さを持って帰ることが出来る特別な施設。ならまち全体で見ると奈良公園に最も近いエリアでもあるので、奈良観光の際はぜひ立ち寄ることをおすすめします。

単なる観光施設・商業施設というだけでなく、奥ゆかしい奈良の本当の魅力に触れられるおすすめの施設。

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