白鶴美術館
はくつるびじゅつかん □兵庫県神戸市





時空を超える、圧巻のコレクション。
以前から気になっていた白鶴美術館。閑静な住宅街が広がる神戸・住吉地区の山手にあります。風光の住吉川畔で、周辺からは大阪湾も眺められる高台に位置します。
白鶴美術館という館名が示すように、運営母体は神戸の酒造大手「白鶴酒造」です。その7代目であった嘉納治兵衛氏(雅号は鶴翁)によって蒐集された珠玉の古美術品が公開されています。現在では国宝2件、重要文化財22件を含む約1,450点以上の作品を所蔵しているそうです。

閑静な住宅街が広がる住吉山手にある「白鶴美術館」。神戸の酒造大手「白鶴酒造」により運営されている。


私立の美術館として1934年に開館した。


中庭が見える玄関ホール。
独特の風情がある、白鶴美術館本館。
白鶴美術館が開館したのは1934年。本館は当時からのもので、どっしりと構えた巨大な城郭風の雰囲気が特徴。外観は青銅葺の屋根が印象的な日本建築、内装は木材を多用しつつも和洋折衷の意匠が施され、独特の風情を持っています。渡り廊下にある鶴をモチーフにした照明器具をはじめ、扉の金具や天井画など随所に鶴をあしらった装飾が見られます。建物は国の登録有形文化財に指定されていて、この貴重な建築を見るだけでも十分に価値があると思えます。

開館当時からある本館は和洋折衷の壮大な建築。独特の風情を持ち、国の登録有形文化財にも指定されている。


メイン入口となる事務棟の玄関。


堂々たる佇まいに圧倒される。


事務棟と本館をつなぐ渡り廊下。


本館は外回りを一周することもできる。
レトロな空間に、身を浸す。
また館内の雰囲気もかなり見ごたえがあります。随所に椅子やベンチが置かれていて、気に入った場所を見つけて座って、そこに流れる静かな時間と対峙します。かすかに心地よいBGMが流れていて、レトロな空間に身を浸していると極上の安らぎが感じられるのです。窓枠や階段の手すり、照明器具などいたるところに、古き良きものがもつ特有の温もりが感じられます。本でも持ってきて、ずっとここで過ごしたいくらいです(実際、自宅が近いので通うかもしれません)。

館内には心地よいBGMが流れ、クラシカルな雰囲気が素晴らしい。鶴をモチーフにした照明器具は必見。


事務棟の廊下にも風格が漂う。


古き良きものがもつ特有の温もり。


鶴をモチーフにした照明器具。


他にも様々な意匠の照明器具が見られる。
国宝2件、重要文化財22件を所蔵。
白鶴美術館のコレクションは膨大なので、一度に全て見るということはできません。また開館するのは年2回、3月上旬〜6月上旬と9月下旬~12月上旬の期間のみです。今回は2024年秋に開催されていた「開館90周年記念展」を訪ねました。
所蔵作品は日本と中国の骨董品が中心。今回は2つの展示室で計90店のコレクションが展示されていました。日本のもので特に印象的だったのは白鳳時代のものという美しい勾玉の首飾り「硬玉勾玉付金鎖頸飾(国の重要文化財)」、奈良時代のお経を江戸時代に切り貼りしたという本や、古墳時代の鈴・鏡・勾玉など、時代が古いからといって現代とも変わらない美意識で作られていることに驚きます。

日本と中国の骨董品を中心に、現在では国宝2件、重要文化財22件を含む1,450点以上の作品を所蔵している。


嘉納治兵衛氏によって設立された。


開館するのは春と秋の年2回のみ。
時間のスケールが違う、中国の骨董品。
中国の骨董品については時代を遡るスケールが違います。国の重要文化財に指定されている「犠首饕餮文尊」「象文卣」はいずれも紀元前の祭器で、見事なまでに精巧に刻まれた装飾は圧巻。また他にも3,000年以上も前の器や南宋時代の青磁器「青磁鳳凰耳花生」など、珠玉の宝物が目白押しです。
また各展示はできるだけ自然光で鑑賞できるようになっていて、余計なスポットライトなども一切ありません。実際その方が、作品と直接対峙しているように感じられます。この点も、白鶴美術館の素敵なところです。

国の重要文化財「犠首饕餮文尊」「象文卣」はいずれも紀元前の祭器で、見事なまでに精巧に刻まれた装飾は圧巻だった。
中東絨毯の世界が広がる、白鶴美術館新館。
また白鶴美術館には開館60周年記念で1995年に建てられた新館があり、そこではとくにトルコを中心とした中東地域から収集された豪華な絨毯が展示されています。100年以上前の豪華な手織りの絨毯がずらりと並ぶ様子は壮観。一見幾何学的に見える模様もよく見れば有機的な意味のある自然などがモチーフになっていて、奥深い中東絨毯の世界を垣間見ることができます。トルコ絨毯やペルシャ絨毯の展示ってなかなか見ることなくて、貴重なコレクションだと思います。

1995年に建てられた新館では、トルコを中心とした中東地域から収集されたトルコ絨毯やペルシャ絨毯が展示されている。
壮大な規模の、私立美術館。
ということで白鶴美術館の想像以上のコンテンツに、圧倒されっぱなしだった1日。自らの趣味で蒐集した世界的価値のある美術工芸品を、ひとりでも多くの方の目に触れるようにとの思いから設立された私立の美術館。その思いは見事なまでに達成されていると感じました。
ところで中庭の中央にある大きな青銅製の灯籠。どこかで見た記憶があると思えば、東大寺大仏殿の前にある国宝の「金銅八角燈籠」を模したものだそう。鶴翁は奈良の出身であるらしく、奈良の社寺伝来品も数多く見られるのも白鶴美術館の特色です。

中庭の中央にある大きな青銅製の灯籠は、東大寺大仏殿の前にある国宝の「金銅八角燈籠」を模したもの。


館内も和洋折衷で洋館のような階段があれば、


日本風の意匠の階段もある。


日本庭園も設えられている。


高台に位置するため大阪湾も眺められる。
photo.
アクセスマップ
■公共交通機関でのアクセス
- 市バス:阪神本線「御影駅」またはJR神戸線「住吉駅」から、38系統「渦森台行」に乗車し「白鶴美術館前」下車すぐ。
- 徒歩:阪急神戸線「御影駅」から北東へ徒歩約15分(約1 km)。
■車でのアクセス・駐車場
- 阪神高速「魚崎出口」から車で約10分。
- 敷地内無料駐車場あり(普通車15台&大型バス1台可)。
詳細情報
名称 | 白鶴美術館 |
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所在地 | 兵庫県神戸市東灘区住吉山手6丁目1-1 |
問い合わせ先 | 078-851-6001 | 白鶴美術館 |
休業日 | 毎週月曜日 |
料金 | 大人:800円 / 65歳以上・大学・高校生:500円 / 中学・小学生:250円 |
駐車場 | 無料駐車場 |
公式サイト | https://www.hakutsuru-museum.org/index.html |
wikipedia | https://ja.wikipedia.org/wiki/白鶴美術館 |
食べログ | - |
トリップアドバイザー | https://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g298562-d1731213-Reviews-Hakutsuru_Museum-Kobe_Hyogo_Prefecture_Kinki.html |
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